“Go for it マレーシア教育移住日記”のブログにご訪問いただきありがとうございます。
今回は、前回に続き 国際バカロレア (IB)のお話しです。
国際バカロレア の初等教育プログラム(PYP)を採用している小学校にお子さんが通うママさんに、IB教育の経験談と保護者から見た良さなどを本音で語っていただきました。
国際バカロレア の小学校(PYP)にお子さんが通うママさんに、IB教育の感想と満足度を聞かせていただきました
学校とIBの小学校カリキュラム(PYP)について
Shingo まずはS子ママ、いつもいろいろ情報交換させていただいてありがとうございます。今日は、IB教育のお話を聞かせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ママ こちらこそ、よろしくお願いします。
教室での一コマ写真
— 何年、IBスクールに通ってますか?
ママ 我が家は2人の子供がいますが、上の子はGrade3からGrade6までの4年間をIBスクールで過ごしました。下の子はレセプション(幼稚園)から入学して、現在はもうすぐGrade5が終わるところなので、そろそろ満6年になります。
— 実際に通ってみてIB教育の率直な感想は?
ママ IBの教育は、学問だけじゃなくいろいろなことが評価対象となります。
IBの教育は「世界の平和に貢献できる世界に通用する人を育てましょう」という理念が柱になっているから、PYPの頃から、成績だけじゃなくリーダーシップをはじめとする「人づくり」という観点を中心に教育がなされていくという印象が強いです。
IBでは授業の中で大人しくしているのは正義ではなく、必ず自分の意見を示すことが求められるので、未熟ながらでも自信を持って何事も取り組んでいくことを重視していると感じます。
— カリキュラムの中で、どういう場面でその理念が垣間見えるんですか?
ママ いわゆる“アクティブラーニング”を通して、「人づくりなんだなぁ」と感じる機会はたくさんあります。
例えば、プライマリーの小さい頃からグループワークが多くて頻繁にプレゼンテーションの機会があり、中でも特徴的なのは、英語や算数などの主要教科の他に、UOI (Unit of Inquiry)という学習があるんです。
UOIとは、日本でいうところの理科とか社会とか家庭科のようなものが融合したような授業で、教科の枠を超えたテーマ学習のことですが、たぶんこのUOIがIB教育のコアな部分だと思います。
生徒たちは、与えられた大枠のテーマの中から自分たちで主体的に課題を設定して、調べ物をしたり、発表したりする探究型のアクティブラーニングを年間を通して進めていくんです。
ちょっと補足になりますが、IBの初等教育プログラム(PYP)では、次の6つを教育の柱となるコンセプトとして掲げているんです。
- Who We Are
私たちは何者であるのか - Where We Are in Place and Time
私たちはどのような場所と時代に生きているのか - How We Express Ourselves
私たちはどのように自分を表現するのか - How the World Works
世界はどのように動き、作用しているのか - How We Organize Ourselves
私たちは自分たちをどう組織しているのか - Sharing the Planet
地球の共有
PYPでは常に上記の6つのコンセプトを拠り所として、各学年で与えられたテーマを数週間かけて1つのUOIとして学習していきます。その中で、自分たちが決めたテーマを自分たちで調べ、発表では紙や創作物でプレゼンテーションを作り、最終的には先生や他の生徒、親の前で発表します。
例えばテーマが「自然災害」だったとすると、日本人の息子はグループのテーマとして「地震とか津波について考えてみよう」ということを提案してグループテーマに決めます。そして、模型を手作りして「大きな地震がくるとこういう被害が出ます」「津波が来たらこういう風に逃げます」ということをみんなで調べて、それを発表するんです。
1つのUOIが終わると、セレブレーション・オブ・ラーニング(Celebration of Learning)という授業参観の機会があって、親にも発表を見てもらうんです。各グループの発表を見た親たちは、「すごいなぁ」と感心してるんです(笑)
Shingo そんなにプレゼンの機会があるなんて、ケンブリッジ式とはずいぶん違う気がしますね。ケンブリッジ式でも発表はあるけど、それが教育の柱になっているというところまではいってない気がする。
ママ そうそう、だからIBの小学校に通ってる子はプレゼンがすごく上手になりますよ。
実際、うちの上の子はセカンダリーからケンブリッジ式の学校に入ったけど、IBの小学校出身の子はプレゼンが上手いと言ってるし、他のママさんたちもそういう意見が多いです。
IB教育では、PYPでのUOIの授業を通じて「自分の意見を述べる」とか「人前で発表する」ということがかなり訓練されるんだと思うんです。IBとケンブリッジでは、その違いはきっとあるんだと思います。
そして、小学校のうちからいろんなテーマをUOIで学習する中で、「こういう風にプレゼンすると人に伝わりやすい」とか「人から見て分かりやすい」ということも学んでいます。
また、グループの各生徒は自分の担当パートを調べて発表に備えるんです。だから、1人でも自分のタスクをやってこない子がいると厄介で、「お前、ちゃんとやってない!」となるわけです(笑)
最近ではSDGsの話題もUOIの授業で取り入れられていて、この前は、マレー熊の話題がテーマとなり、保護環境センターのスタッフの方とオンラインでつなげて授業をしました。
マレー熊は“森のドクター”と言われていて、マレー熊は木に寄生する虫を食べるから、マレー熊の数が減少すると寄生虫が増えることで木が倒れて森林の面積が減り、結果として地球温暖化につながるという地球環境の問題です。
マレー熊
引用元: Malaysian Wildlife
それを皆で考えようというのがテーマなんだけど、そこで子供たちから保護環境センターの人にどんどん質問が出るんです。止まらないくらい(笑)
その積極的な質問を見ていると、「この子たちすごいなぁ」と本当に感心します。
UOIはすべてアクティブラーニングなので、日本の小学校での理科とか社会の授業のイメージはまったくありません。初めて見に来たら、きっとビックリすると思います(笑)
Shingo なるほど、おっしゃるようにUOIがIBの初等教育の核心部分なんでしょうね。
ママ そうですね。テーマについてインターネットで情報を調べることでリサーチする力とかインターネットスキルが付いたり、プレゼンで「どうやったら人に分かりやすく伝えられるか」とか、グループワークだから「ああでもない、こうでもない」と議論したり、その中で他人の意見を尊重して「こうしたほうがいい、ああしたほうがいい」とやり合って意見をまとめ上げ、そういう学習をPYPを通してずっと繰り返しやっていく感じなんです。
その中で自分の意見を持ち、人に伝えていくことを学び、人を作っていくということにつながるんだと思います。
ちなみに、各自のワークはすべてクラスの中でやるので、宿題として持ち帰るってことは基本的にはありません。それから、プレゼンがあるのはUOIだけで、英語や算数といった科目ではプレゼンはありません。
学費、進路について
運動会の様子
— IBスクールの学費って、ケンブリッジ式の学校と比べると相対的に高めですよね?
ママ そうですね。息子の学校も、入学した当初は安かったけど、年々学費が上がってます。
もちろん、日本のIBスクールと比べたら高くはないと思いますが、マレーシアのIBスクールはだいたいどこの学校も学費が安いという学校はないし、うちの学校の学費は中間くらいだと思います。
PYPのうちはまだいいけど、MYP(IBの中等教育プログラム)に進むと学費はもっと高くなっていきます。
— セカンダリーはそのままMYPに進みますか?
ママ 上の子はセカンダリーからケンブリッジ式の学校に進みました。下の子もプライマリーを卒業したら、上の子と同じケンブリッジ式の学校に進む予定です。
— どうしてケンブリッジ式に進むのですか?
ママ 今のIBスクールは20人くらい少人数制のクラスで先生の目も行き届いてて、すごく手厚いのは満足しているんだけど、幼稚園からほとんどクラスのメンバーも変わらずに幼なじみのような、半分兄弟のような環境がずっと続いているんです。だからいじめもないし、「あいつはこんなキャラだよね」と各自のポジションが決まってるんです(笑)
それから、IBスクールはなんだかんだと経済的に余裕のある地元のお金持ちの家庭の子が多いんですが、我が家の方針としては、セカンダリーからはもっと大人数の学校の生活の中で社会の厳しさを学んでもらいたいと思ってるんです。実際、上の子はそうして大規模の中学校で揉まれて、社会勉強しながらしっかり育ってると感じています。
IBの教育自体は私も母として気に入ってますが、このまま温室育ちを続けるよりは、中学校で多少の厳しさの中でも生き抜く力をつけてもらいたいと思ってそういう決断をしました。
その他に、子供が2人なのでコストの問題もありますね(笑)
— MYPに進む子は、なぜMYPを選ぶのでしょうか?
ママ そのままIBDP(IBの大学入学資格)の取得を目指す子が多いと思います。
先ほどもお話ししたとおり、IBスクールには経済的に余裕のあるお金持ちの子が多いので、IBDPを取得してからアメリカやイギリス、オーストラリアなど海外の大学を目指す子が多いです。
うちの子の同級生のお兄ちゃんとかお姉ちゃんとか、すでにアメリカの大学に行ってるというご家族もあります。マレーシア国内の大学に行くという子は、ほとんど聞かないですね。
Shingo アメリカの大学を目指すのはケンブリッジ式スクールには少数派だから、やっぱりIBスクールとの違いを感じますね。
IB教育と英国式カリキュラムの違いについて
— 同じ中等教育でも、IBのMYPと英国式IGCSEの違いは?
ママ 我が家はMYPに進んでないのでなかなか難しい質問だけど、MYPはGrade10で試験があります。100%外部試験で評価されるIGCSEと比較して、MYPは内部試験と外部試験の両方で評価され、外部試験では筆記テストというよりはエッセイであったり、内部評価としては授業にどれだけ積極的に関わっているか、どれだけ周りの人に貢献しているかということが評価に入ります。
また、MYPでは年に一度海外研修旅行があって、研修期間中の集団生活の中での振る舞いや見聞を広げる能動的な活動が評価されます。修学旅行的な遊び旅行の意味も半分あるけど、そこでもやっぱりグループワークがあって評価対象となるんです。
IBは「人間的な部分を伸ばしましょう」というのが柱の理念となっているので、ある意味、かっちりと学問にフォーカスしているケンブリッジ式の教育と比べて伸び伸びさがあって余裕を感じます(笑)
それぞれのカリキュラムにメリット・デメリットがあるので、どっちがいいかは好みの問題だと思うのですが、とにかくIBはお金持ちの余裕を感じるし、勝ち組の匂いがする(笑)
— IBに懸念点があるとしたらどこですか?
ママ IBの教育は理科とか社会とか個別に勉強するのではなくて、UOIを通して大枠的なことから学習がスタートするので、最初見てるとフワフワしてて、「これ、大丈夫かな?」と心配になる親もけっこういます。
日本からうちの学校に入ったご家族で、このフワフワ感に不安を覚えて、早々に辞めちゃう子もいました。
でもIBの教育ってそういう風に大枠的なものから学習していくから、長くやっていくうちにその良さが分かるんだけど、子供に1〜2年で「英語を話せるようになってもらいたい」とすぐに結果を求めるご家庭には向いてない気がしますし、長い目で判断しないといけないなと思います。
できればPYPからスタートしてMYPまでやり切って、その後にIBDPに行くか他の道に進むかというくらいに腹を決めたほうが良い結果につながると思います。
小学校でのIB教育の満足度について
— 現時点のIBに対する満足度は?
ママ 私はIBの教育方針が好きだし、満足してます。小さい頃から子供のプレゼンを見ていると、本当に成長を感じられます。
プレゼンテーションだけを強調するわけじゃありませんが、プレゼンはどこの世代でも将来働いても必要なスキルなので、これを小学校時代に繰り返しトレーニングして「自分の言いたいことを人に伝える」という基礎能力を身に付けることができたのは良かった点だと思っています。
IBは元々、「世界を牽引しましょう」というエリートに向けた“人材作り”を目指しているので、子供の頃から、50円、100円のことでとやかく言わないというか、あくせく勉強しなさい!という感じじゃなくて余裕がある(笑)
— 最後に、これからIBスクールを目指すご家族に一言お願いします。
ママ 各カリキュラムには一長一短があるので一概には言えませんが、もしマレーシアへの教育移住でIBの道に進みたいと考えるのであれば、いま一度、ケンブリッジ式など他のカリキュラムも含めて「どのカリキュラムで我が子に学ばせたいのか?」という両親の好みをはっきりさせること、そして「どれだけ時間をかけてIBの教育に取り込めるか?」という2点が私は重要な要素だと思います。
Shingo いろいろ貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。(終わり)
PYPの教育の詳細についてご興味のある方は、かなり詳しい資料が以下よりダウンロードできますのでご覧ください。
【PDF-日本語】PYPのつくり方: 初等教育のための国際教育カリキュラムの枠組み(3.3MB)
まとめ
IB教育ではPYPからMYPまで10年間かけてじっくり学べば人づくりの効果がより現れる
アメリカなど世界の大学を目指すなら、IBDP取得まで目指したい
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