“Go for it マレーシア教育移住日記”のブログにご訪問いただきありがとうございます。
つい先日、世界大学 ランキング のメジャーな指標の1つであるQS世界大学 ランキング の2022年版が公開されましたが、それを見ると、日本の大学が毎年苦戦する中、マレーシアの私立大学の躍進が目立ちます。
一方で、昭和の時代に日本で生まれ育ってきた1人の元サラリーマンとして、“この ランキング を素直に信じていいだろうか?”と疑問に思うところもあります。
今回は、その疑り深い眼差しでこの ランキング を見て思った感想と、マレーシアの大学の可能性について触れてみたいと思います。
QS世界大学 ランキング 2022年版でマレーシアの私立大学が躍進したけど、それを信じて大丈夫なのか?
4つのメジャーな世界大学 ランキング
世界大学ランキングとは、大学などの高等教育機関をあらゆる指標によって順位付けした国際的なランキングのことで、その作成者は、主に、雑誌、新聞、政府、企業、大学などの様々機関が作成し、毎年ランキングを発表しています。
世界的にメジャーなランキングとしては、英国のQS世界大学ランキング(QS: Quacquarelli Symonds)、同じく英国のTHE世界大学ランキング(THE: Times Higher Education)、米国のU.S.News世界大学ランキング、そして中国の上海交通大学世界大学学術ランキング(ARWU: Academic Ranking of World Universities) の4つが挙げられます。
ご参考までに、それぞれの最新のランキングは以下のリンクのとおりです。
QS World University Rankings 2022
World University Rankings 2021
2021 Best Global Universities Rankings
2020 Academic Ranking of World Universities (ARWU)
これらのランキングですが、英国の調査は英国の大学が上位にランクされる傾向にあり、米国の調査は米国の大学が上位にランクされる傾向があります。
そして、それぞれのランキングは独自に指標を独自の方法で集計し、各指標の重み付けも異なるため、総合点の評価方法は異なります。
2022年版、QS世界大学 ランキング が発表された!
当ブログでは、様々な記事で英国QS社のランキングを参照していますので、ここではQSランキングにフォーカスしてみたいと思います。
QS ランキング の評価方法(メソドロジー)
QS社によると、2022年のランキングでは世界97のロケーションにある6,415校に調査を実施し、合計で1,705校の評価を行い、上位1,300大学(前年比145校増)を最終的なランキングをまとているとのことです。
その根拠となる指標は以下の6つで、それぞれの指標を独自の重み付けにより採点し、総合点を算出しています。
QSランキングの評価指標
- 学術関係者からの評判 (Academic Reputation)
130,000人以上の学者から収集されたアンケート調査の回答に基づいています。【重み付け=40%】
- 雇用者の評判 (Employer Reputation)
75,000を超える雇用者から収集された調査回答に基づいています。アンケートでは、大学との関係や卒業生の就職の可能性について調査しています。【重み付け=10%】
- 教員1人当たりの論文被引用数 (Citations per Faculty)
研究の影響を測定します。過去5年間に各大学が発表した研究論文の総引用数を、その大学の教員数で割って算出しています【重み付け=20%】
- 学生1人あたり教員比率 (Faculty Student Ratio)
学生数を教員数で割った教育能力を示す指標。この指標により、学生が自分の選んだ大学のクラスの大きさ(人数)を予測することができます。【重み付け=20%】
- 外国人教員比率 (International Faculty Ratio)
国際化の度合いを測定し、各大学の外国人教員の比率を測定する2つのQS指標の1つ。【重み付け=5%】
- 留学生比率 (International Student Ratio)
国際化の度合いを測るQSの2つの指標のうち、もうひとつは、各大学の留学生比率です。留学生の視点から見た大学の国際的な魅力を間接的に表しています。【重み付け=5%】
❶の「学術関係者からの評判」は130,000人以上の教員陣に調査を行い、❷の「雇用者の評判」は75,000人以上の雇用者に調査を実施し専門家の意見も結果に織り込んでいます。❸の「教員1人当たりの論文被引用数」は2015年から2019年にかけて発表された1,470万本の論文と9,600万回に及ぶそれらの論文の被引用数を調査結果に反映しています。
最終的なランキングは、❶〜❻の各指標を重み付けした総合点(Overall)により確定されます。
日本の主要大学の ランキング は?
調査対象に含まれる1,300校のうち、日本の大学は合計48校がランクインしました。
主要な大学のランキングを見てみると、国立大学の2トップである東大と京大は順位を上げたものの、旧帝大など有力国立大学と私立大学の2トップである早稲田と慶應は僅かながら順位を下げています。
大 学 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|
東京大学 | 24位 | 23位(↑1位) |
京都大学 | 38位 | 33位(↑5位) |
東京工業大学 | 56位 | 56位(同) |
大阪大学 | 72位 | 75位(↓3位) |
東北大学 | 79位 | 82位(↓3位) |
名古屋大学 | 110位 | 118位(↓8位) |
九州大学 | 124位 | 137位(↓13位) |
北海道大学 | 139位 | 145位(↓6位) |
慶應義塾大学 | 191位 | 201位(↓10位) |
早稲田大学 | 189位 | 203位(↓14位) |
多くの大学が前年度から順位を落としているので、世界から見た日本の大学に対する評価は、なかなか厳しいものがあるとうかがえます。
QS社は、日本の大学が順位を落としている理由を以下のように述べています。
「QS世界大学ランキングで、日本の大学は苦戦が続いています。そのため、このような後退傾向の背後にある理由を理解することがきわめて重要です。
基礎データをみると、世界の学界全般は依然として日本の大学を高く評価していることがわかります。
日本の後退の主な背景として、研究業績の低下があげられます。20年にわたり知的資本に対する日本の投資が停滞してきたことの結果であり、例えば日本の博士課程に在籍する学生の総数をみると、2003年時点と比べ、ほぼ半数にまで減っています。
一方、中国は一貫して博士号の数を増やしており、日本と中国の差は顕著になっています。またスイスも、博士号課程の学生に寛大な財政支援を行っています。
今年の初め、日本では「大学ファンドの創設」が新たに発表されました。これは衰退しつつある日本の研究成果の復活に向けた、希望の持てる一歩ですが、投資開始は2022年以降であり、我々のランキングにおいて成果が目に見えるようになるまでには、そこからまだ数年かかるでしょう」
引用元: 株式会社KEIアドバンス(河合塾グループ )
『2022年版QS世界大学ランキング発表(QS World University Rankings 2022) – 最新版世界ランキングで日本の大学は48%が前年より下降』(2021.6.9, PR TIMESより)
「研究実績の低下」という点が大きな原因だとすると、一朝一夕にランキングは上がるものではないので、日本の大学は継続的に国際ランキングを上げる努力をしていかなければならないのだろうと思いますが、そのためには博士号取得者の機会や待遇の改善、大学に対する補助金の増強など、政策として国の支援も必要だろうと思われます。
マレーシアの主要大学の ランキング は?
調査対象に含まれる1,300校のうち、マレーシアの大学は合計22校がランクインしました。
マレーシアの大学の中で常に頂点にあるのは、「マレーシアの東大」と言われる国立マラヤ大学ですが、同大学をはじめとする公立大学はほとんどが前年比で順位を落とす中、私立大学の雄であるテイラーズ大学(Taylor’s University)とUCSI大学(UCSI University)の2校は飛躍的に順位を上げてきました。
2つの私立大学が順位を躍進させたことを受け、マレーシアの国民紙“The Star”はそのWeb版で、『テイラーズ大学が全国トップの私立大学に選ばれました』と題する記事を掲載しました。
The Star “ Taylor’s University named nation’s top private institution ” 2021.6.10
ちなみに、もう1つの私立大学の雄であるサンウェイ大学(Sunway University)は上記の表の中にはありませんが、2021年の「701〜750位」から2022年は「651-700位」にまで順位を上げています。
今回ランクインしたマレーシアの大学の数は過去最高とのことで、世界的に見てマレーシアの大学の評価は上がりつつあると言ってもいいのかもしれません。
日本の大学の順位がなぜ低くなってしまうのか?
「研究実績の低下」という要因以外に日本の大学のランキングが低い理由は、国際性の指標である「❺外国人教員比率(International Faculty Ratio)」と「❻留学生比率(International Student Ratio)」の評価が低いのが影響しているものと思われます。
例えば、我が国の最高学府である東大の各指標のポイントを見てみると、「❶学術関係者からの評判 (Academic Reputation)」と「❸教員1人当たりの論文被引用数 (Citations per Faculty)」という学術実績を表す2つの指標、「❷雇用者の評判 (Employer Reputation)」、そして「❹学生1人あたり教員比率 (Faculty Student Ratio)」の指標はほぼ完璧に近く、一方で、国際性を表す「❺外国人教員比率(International Faculty Ratio)」と「❻留学生比率(International Student Ratio)」の2つの指標の評価が低いために総合点を押し下げていることが分かります。
引用元: QS World University Rankings 2022 に一部加筆
東大ですらこの状況なので、他の大学も推して知るべしです。つまり、問題はやっぱり国際性の低さであり、東大に限らず日本の大学の縮図がここに見え隠れするわけです。
“日本 vs マレーシア”で私立大学トップ2校を比較
マレーシアの2つの私立大学がQSランキング2022年版で大きく順位を上げたことを受け、一部の留学エージェント筋では「マレーシアの私立大学はここ数年で順位を上げ上昇トレンドにあるから、5年もすれば早慶を抜くかもしれない」との論調も見られます。
僕は、このニュースだけを取り上げてそのように主張するのはかなり危険だと思うので、この点について、少し掘り下げてみたいと思います。
QS以外のランキングを見てみると
今回のニュースになったのはQS世界大学ランキングですが、QS社のものを含めてメジャーなランキングは4つあることは冒頭でお伝え済みです。
この4つのランキングをすべて見てみると、まだまだマレーシアの大学は世界的に認知されていないというのが実態です。
ランキング | 慶應 | 早稲田 | Taylor’s | UCSI |
---|---|---|---|---|
QS | 201位 | 203位 | 332位 | 347位 |
THE | 601-800位 | 801-1000位 | 圏外 or 対象外 | 圏外 or 対象外 |
U.S.News | 529位 | 467位 | 圏外 or 対象外 | 圏外 or 対象外 |
上海 | 301-400位 | 601-700位 | 圏外 or 対象外 | 圏外 or 対象外 |
悲しいことですが、QS社以外はマレーシアの大学はまったく眼中にありません。
しかし、QSはアジアの大学も取り込んで順位付けしていることから、マレーシアの大学留学エージェントはQSランキングについてしか言及しないのです。
それでは僕はアンフェアだと思うので、読者の皆さんには「QS社以外のランキングも必ずチェックして総合的に判断してください」とお伝えしておきます。
雇用者からの評価についての疑問
QSランキングの評価指標の中に、「❷雇用者の評判 (Employer Reputation)」というものがあります。
先ほどのThe Star紙も先ほどの記事の中で、テイラーズ大学は「雇用者の評判」の項目で世界トップ90位に入ったことを特筆すべきトピックとして伝えており、テイラーズ大学側もその成果について自画自賛してます。
記事を読むと“そんなにすごいのか?”と一瞬思うところですが、この指標を日本とマレーシアのトップ私立大学で比較してみると、とりわけテイラーズ大学が際立って良いというわけではないことが分かります。
つまり、マレーシアのテイラーズ大学とUCSI大学より、日本の慶應大学と早稲田大学のほうが雇用者からの評価が高いのです。
引用元: QS World University Rankings 2022 に一部加筆
「雇用者の評判」という点については早慶の両大学が高く評価されていることは皆さんお察しのとおりですが、QSの点数を見ても両大学は高評価です。つまり、このQSの「雇用者の評判」に関する点は、“普通の日本人の感覚に近い”ということになります。
ここで1つ疑問が湧いてきます。
QS社によると、「雇用者の評判(Employer Reputation)は75,000人以上の雇用者に調査を実施し専門家の意見も結果に織り込んでいる」とのことですが、「この母数である75,000人はいったい誰なのか?」ということが明確ではありません。
QSランキングは、世界97のロケーションで75,000人の雇用者を対象とする調査ですが、上記の引用図をご覧いただくと分かるように、日本の慶應大学と早稲田大学、マレーシアのテイラーズ大学とUCSI大学はすべて「雇用者の評判」の点数がかなり高い結果となっており、そう考えると「卒業生が入社したこともないまったく縁遠い国の会社が当該大学を評価する」とは思い難く、別の言い方をすると、「当該国の企業が卒業生の入社実績のある当該国の大学を評価している」と考える方が自然だと思われます。
つまり、日本の大学を評価するのは国内企業・外資企業に関わらず日本にある企業(雇用者)である可能性が高く、マレーシアの大学を評価するのは国内企業・外資企業に関わらずマレーシアにある企業(雇用者)である可能性が高いので、この指標は「グローバル指標」ではなく「ローカル指標」である可能性が高いということです。
たしかに、マレーシアではテイラーズ大学とUCSI大学のマレーシア国内での評価は高いことは事実なのですが、この評価を頼りにして、仮に日本人の学生が両大学を卒業後にマレーシアで就職するとなると、マレーシアのローカル賃金での雇用(大卒初任給6〜7万円前後)となるので、ほとんど旨味がありません。
とはいえ、日本でもいくつかのベンチャー企業ではマレーシアを含む海外大学卒の人材を積極的に新卒採用する企業もあるので、雇用ニーズの高いIT系のコンピュータサイエンス学部卒であれば就職の機会はきっとあるのではないかと思いますし、ソフトウェアエンジニアなら転職市場でグローバル賃金に乗れるチャンスも出てくる可能性もあります。
一方で、マレーシアの大学を卒業して日本とマレーシア以外の国で働きたいという希望がある場合、マレーシアの大学卒という肩書ではまだまだグローバル企業でグローバル賃金の雇用体系で就職するにはハードルが高く、現実的な選択肢とは言えないというのが実態なのです。
ここから得られる示唆
大学からのマレーシア留学ではなく、まずマレーシアのインター校に留学して英語力を身につけ、帰国生受験で早慶の附属中高に入ったり、同じく帰国生受験で早慶の大学に入ることができれば、日本国内の新卒採用市場では勝ち組に入る可能性も十分にあり、大手企業に就職できるチャンスもかなりあるのではないかと思われます。
僕は大手企業に馴染めなくてベンチャー路線に走った身なのですが、社会人の入り口である新卒から数年は、やはり大手企業でしっかりとした研修や教育を受けた方が後々の財産になるのではないかと思っています。また、大きい会社から小さい会社に転職するのは簡単ですが、小さい会社から大きい会社に転職するのは難しいのが現実です。その後の転職は自由なので、まず20代は大きい会社で社会勉強しながら経験を積み、社会人としてのベースを築いた後に転職なり何なり自由にすればいいと思うのです。
マレーシアの賃金は新卒初任給が6〜7万円なので、就職の機会と賃金の面から見れば、英語力を身につけた上で日本のトップ私立大学に入学して大手企業に就職するほうが、生涯獲得賃金の面から見ても圧倒的に有利です。また、早慶に入れば、学生時代に海外有名大学への1年留学などのチャンスもありますし、いったん大企業に勤めて職歴を積んだ後、MBAなど海外大学院進学への可能性も広がります。
やや余談ですが、以前、ある世界的な消費財メーカーの六本木にあるアジアヘッドクォーターの人事部のマネージャーの方(日本語ペラペラのマレーシア人)と話をする機会があったので、「グローバル労働市場で中途採用をする時にチェックする点は何か?」と質問してみたところ、当然ながら「職歴」と「出身大学」を確認するそうです。
出身大学について大雑把に言えば、世界大学ランキングで200位くらいまで、かつ英語圏の国(英・米・加・豪・NZ)またはEU圏で英語カリキュラムの大学を卒業していることが前提条件となるとおっしゃってました。
これがグローバル企業の共通認識だと仮定すると、マレーシアの大学からグローバル企業のグローバル採用に応募して就職を勝ち取るというのはかなり難しいということになるわけです。
なので、これからマレーシアの大学への留学を目指す日本の高校生には、マレーシアの私立大学はランキングが上がっているから、その学歴は一生の財産となりますという安易な論調を鵜呑みにしないで欲しいと思うのです。
でも、マレーシアの大学には一発逆転の可能性がある
では、「マレーシアの大学卒は世界に出ていくチャンスはないのか?」というと、そんなことはないのがマレーシアの大学の素晴らしいところ!🤗
マレーシアの私立大学には、デュアルディグリープログラム、ツイニングプログラム、海外大編入プログラムなど、海外の有力大学との提携プログラムが豊富に用意されています。
この海外大学提携プログラムは、実はとんでもない裏技メニューなのですが、日本の高校生にはまだそれほど注目されていません。
どういう裏技なのかというと、例えば、サンウェイ大学に入学するけれどもサンウェイ大学の学位とともに英国ランカスター大学の学位が取得することができたり、テイラーズ大学に入学するけれども学位は英国レディング大学や豪州のクイーンズランド大学であったりと、各国の有力大学の学位が取れてしまうまるでマジックのようなプログラムなのです。
このような海外大学プログラムを修了して学位を取得することで、世界大学ランキング上位の英国大学卒という肩書きでグローバル雇用・グローバル賃金を得るチャンスが出てきます。
このあたりは、後日の記事でもう少し掘り下げてみたいと思います。
まとめ
マレーシアの私立大学を普通に卒業するより、帰国生受験で早慶に滑り込めればそのほうが生涯賃金は多い(はず)
でもマレーシアの大学の海外大提携プログラムは一発逆転の魅力を秘めている
この記事が「参考になった」「面白かった」など、皆様のお役に立つことができましたら、投げ銭にご協力いただけると嬉しいです!金額は自由なので皆様のご評価にお任せいたします。Squareの各種クレジットカード決済(ログイン不要)またはPayPal(ログイン必要)の決済で投げ銭できます。どうぞよろしくお願い申し上げます☺️
※ Square社とPayPal社のカード決済システムは多くのサイトで幅広く利用されています。当ブログがご利用者様のカード情報を得ることはありませんのでご安心ください。
次回に続く
クリックして応援してください!!励みになります!
にほんブログ村