“Go for it マレーシア教育移住日記”のブログにご訪問いただきありがとうございます。
2023年7月、我が家の次男は Epsom College でのA-Levelの全課程を修了し、マレーシアのインターナショナルスクールでの留学生活を終えました。
その後、1632年創立のオランダの名門国立大学であるアムステルダム大学に、2023年9月に進学を果たしました。
当ブログでは常にリアルタイムで我が子がマレーシアのインターで歩んでいる姿を実況中継して参りましたが、今回はいよいよ我が家のマレーシア留学の集大成の記事となります。
私たち家族が2018年にマレーシアでの教育移住を始めた頃、中学生や高校生から留学を始めた子がどのようにその道を歩むのかという情報はほとんどありませんでした。
実態が掴めない道を親子共々歩んでいく中、たくさんの苦労もありました。
それ故に、読者の皆様には、我が家の次男がコタキナバル日本人学校に転校してからA-Levelを修了するまでの5年間の経験を、次男のこれまでの軌跡とともに惜しみなくお伝えしたいと思います。
【#186】A-Level を修了し、次男のマレーシア留学は幕を下ろしました (前編) – A-Level に進むべきか否かのボーダーラインとは?
次男の年表
当時、長男は高校1年生、次男は中学3年生でしたが、私たちにはそれまで海外生活の経験はありませんでした。
次男のこれまでの歩みを年表に整理してみると、次のとおりです。
◉ 次男の年表
保育園 | 公立保育園 |
---|---|
小学校 | 私立一貫校の小学校を卒業 |
中学校 | 私立一貫校の中学校に3年生の2018年4月まで在籍 |
日本人 学校 |
2018年4月にコタキナバル日本人学校(中学部)に転校し、2019年3月に日本の義務教育を修了して卒業 |
インター校 | コタキナバルの Jesselton International School のYear9(Term3)に編入、IGCSEの全課程を修了し2021年6月に卒業 |
シックス フォーム |
クアラルンプールに家族で移住し、2022年1月にEpsom College in Malaysia のA-Level・ファストトラックコースに入学、A-Levelの全課程を修了し2023年6月に卒業 |
大学 | 2023年9月、オランダの国立アムステルダム大学(Universiteit van Amsterdam)へ入学 |
次男は、小学校から大学まである一貫校に入学したため、小学校からの学友と共に、中学、高校へと内部進学し、大学は外部受験をするというのが当初の予定でした。
そのため、当時、英語の学習といえば学校の授業で学ぶのみで、進学塾にも通ったこともなければオンライン英会話もしたことがない、ただただ子供らしい子供でした。
Image photo: 日本の小学校
コタキナバル日本人学校については、以下の記事で詳しく触れています。
英国式インターではA-Levelは必須なのか?
皆さんは、英国式インターはA-Levelが終わるYear13が卒業だと思ってますか?
私は、子供たちのマレーシアでの留学を検討し始めた当初、英国式インターの最終学年はYear13のA-Level修了までと思っていました。
マレーシアのインターナショナルスクールで多くの学校が採用している英国式カリキュラムですが、結論から言うと、マレーシアでは英国式義務教育課程であるIGCSEの試験にパスすれば「ハイスクール卒業」という扱いになり、その後に大学あるいは大学予備課程(Pre-University Programme)に進学するという選択肢があります。
従いまして、マレーシアではA-Levelに進むことが絶対ではありません。
では、“なぜA-Levelまで進まなければならないか?”という認識が生まれるかというと、イギリス本国では、大学進学を希望する高校生は必ずA-Level(またはIBDP)を履修することが必須となっているため、イギリス人の先生が大半のインターでは、大学に進学するためにA-Level(またはIBDP)を履修するのが当たり前という空気が流れているのです。
なので、そういったインターの場合、先生方がIGCSE修了後の進路として、大学のファウンデーションコースやディプロマコースに進むことを勧めることはほとんどありません。
現にA-Levelを設置しているいくつかのインターでは、入学のための学校説明会で「Year11で高校を卒業したらファウンデーションコースに進めるよ」とは積極的には言いません。大抵の場合、「Year11の後はそのままYear12に進みます」と、かなり曖昧にぼかした説明をします。
一方、マレーシアでは、IGCSE5科目で「C」以上のスコアを取れば、その成績表を提出することで大学予備課程であるファウンデーションコース、または3教科で「C」以上のスコアがあれば大学のディプロマコースに進むことができるのです。
このため、欧米の大学や、医歯薬理工学系や法学系で難関とされる世界の大学に進学することを想定していない生徒にとっては、わざわざ難易度が高くて学費も高いA-Levelに進むインセンティブがありません。
ファウンデーションコースやディプロマコースは日本にはない仕組みのため、日本人のご家族には認知度が低いのですが、海外ではわりと見かけるシステムです。
一般的に、Year11のIGCSEの試験で良い成績を取っていないと次のステップに進めないと思われがちですが、マレーシアにはA-Level以外にも進路の選択肢は豊富にあるのです。
A-Levelに進むかどうかのボーダーライン
次男がインターナショナルスクールに入学したのは、高校1年生の春。その時点で、彼はA-Levelを目指していませんでした。そもそもA-Levelがどういうものなのかを、よく理解していなかったというのが正直なところです。
私も、先生や先輩ママ友に教えてもらって少しずつ分かってきたことは、A-Levelはとてもタフなプログラムであるということ。また、学費も高めに設定されている学校が多く、大抵のマレーシア人のご家庭では最優先で選ぶ進路ではないということです。
次男もA-Levelを最優先には考えておらず、当初は大学のファウンデーションコースを最有力の進路候補としていました。
ところが、A-Levelに進むことを決断することになった大きなきっかけは、Year11で行われたIGCSEのMock Examination(モック=模擬試験)でした。思いの外、モックの成績が良かったのです。
重要なのは“我が子はA-Levelに向いているのか?”という視点
まず重要なのは、“我が子にA-Levelが向いているかどうか?”ということです。
A-Levelの特徴は、3〜4科目という少ない科目を履修し深く学んでいくということです。
A-Levelの2年目の課程では、大学1年生で学ぶ内容が含まれてきます。そして、授業は爆速で進んでいきます。
2年目になると先生に教わることも少なくなってきて、全課程を爆速で終わらせた後は、自分で理解を深め、知識を定着させていく作業の積み重ねです。
これがかなりのハードワークとなるので、A-Levelの2年間をやり遂げるには、科目に対するモチベーション、目的意識の維持、忍耐力、タイムマネージメント等の自己管理能力が問われるのです。
この必要な能力(適性)を次男に当てはめてみると、親の私から見て、“次男にバッチリ適しているとは言えないけど、チャレンジする価値はあるのではないか?”と思える子供です。
理由は、漠然と将来にワクワクしている素直な性格であること、親子との対話が多くお互いの話をよく聞く関係性であったこと、「あの子のこんな所が凄い!」という優秀な子からの刺激を吸収して自分のモチベーションに変える性格であったこと、などです。
ただし、元来勉強が好きな子供というわけでもなく、何もすることがなければいつまでも寝っ転がっているような子です。
たまに、自走できる優秀な子を持つ親御さんが「勉強しなさいなんて一度も言ったことがない」という話を耳にしますが、我が家の次男は放っておいたら動かない普通の子供でした。
判断基準とタイミングは IGCSE モック試験
それは、IGCSEのモックの結果を手にした時からでした。
IGCSE本試験のだいたい4ヵ月前に行われるモックは、学校の先生が過去問をモディファイして問題を作ります。
モックの目的は、生徒が試験のボリュームに慣れること、時間配分を体感すること、自分の現在の力を知ること、そして次の進学先に出願するための成績として活用されること、にあります。
モックで今の自分の実力を捉えておくと、その先の進路を早く決めることができるのです。
次男は、モックの数ヵ月前から勉強を始めました。具体的には、ひたすら過去問をこなして“IGCSE”という“相手”を知ることです。
当時、コロナ禍の規制がマレーシア全域に敷かれていて、学校と自宅の往復しか許されない環境でしたが、このため余計な娯楽の誘惑がなかったことが逆にモックに集中できる助けにもなりました。
この時点では、まだA-Levelに進むことを決定とはしていませんでしたが、徐々に学校の成績が上がってきたことから、A-Levelを選択肢に含めてもいいのではないかと思い始めていました。
そして迎えたモック。その成績は次の結果となりました。
◉ 次男のモックの結果
文字が小さいので、以下に表にしてみます。
Subject | Forecast Grade |
---|---|
English 2nd Language | A |
Mathematics | A* |
Economics | A |
Additional Mathematics | A |
Physics | B |
ICT | A* |
Environmental Management | B |
Commerce | A* |
「3A*, 3A, 2B」という結果は、私たちの期待を良い意味で裏切りました。
つまり、“この結果をファウンデーションコースに使うのは少しもったいないのかも…”という考えが浮かぶようになったのです。
A-Levelで同じ科目を選択するかどうかは別として、IGCSEでの学習の理解度と成熟度の目安として「A*」が3教科以上獲れる見込みが高い場合、A-Levelを目指しても良いのではないかと私は思います。
単に得意な科目の1つで「A*」を取ったとしても、他の2つのIGCSEの成績があまり芳しくなかったら、A-Levelの途中でスタミナが切れてしまうリスクがあるからです。
言い換えると、IGCSEの結果で余力を残すポテンシャルを示せないのであれば、その先のA-Levelは戦えないというのが私の正直な見解です。
A-Levelを闘うために必要な英語力の水準
あくまで1人の保護者としての感想ですが、文系に進むならIELTSのオーバーオールのスコアで「6.5」、理系に進むなら「6.0」は欲しいところです。
IGCSEを終える時点でこの水準の英語力が備わっていないと、A-Levelでは授業についていくのに苦しみます。そして、途中でドロップアウトすることもあるのです。文系科目は、特にリーディングとライティングの能力が問われます。
次男はIGCSEの英語科目は、“English as Second Launguage”を受けました。これは英語を母国語としない生徒のための英語科目ですが、日本から留学する生徒は、よほど幼少期からインターナショナルスクールで学んでいない限り、この“English as Second Launguage”を受験します。
これは最近たまに少し耳にする情報ですが、インターに入学して間もない生徒が、“English First Language”のクラスに在籍していて、IGCSEも“First Language”で受験するというのです。
幼稚園やプライマリーの前半から学んでいるお子さんならまだしも、セカンダリーからマレーシアで留学し始めた日本人生徒がIGCSEで“First Language”を受験して良い成績を出した例は極めて稀です。
実はこの背景には、昨今のインターナショナルスクール事情が見え隠れしています。
コロナ禍明けのマレーシアのインターナショナルスクールでは、多くの学校でクラスが欠員だらけとなり、英語力が未熟な生徒もガンガン受け入れました。
これから英語を学ぶという日本人生徒にとってはまたとないチャンスとなりましたが、このため英語力が未熟な生徒が激増し、EAL(英語補講クラス)が満席となって、2023年の春あたりから、EALが満席だからすぐに入学することができないという学校が増えました。
学校としては、新たな入学希望者を受け入れるためには、EALの枠を空ける必要があります。
本来の英語力から見ればEALに在籍するべき生徒も早々にEALを卒業させられ、その後に“English as Second Language”のクラスに放り込まれます。学校によっては、“First Language”のクラスに配置されてしまうこともあるというのが最近の実例です。
この事態を理解していないと、親としては「うちの子は英語が上達したんだわ!」と喜んでしまいますが、肝心なのは“どのクラスに在籍しているか?”ではなく、“どれだけの英語力を身につけているか?”であることは言うまでもありません。
そもそも、“English First Language”と“English as Second Language”では、試験内容が異なり、当然、First のほうが難易度は高いのです。
英語力が十分に備わってないまま、“English First Language”で英語を学び、そのままIGCSEの本試験を受けた場合、下手すると「C」も獲れずに「D」となってしまうこともあります。
First であっても Second であってもトータルの履修時間数は同じで、Firstの授業は英語レベルの高い子たちと一緒に学ぶので、その経験が無駄になることはないでしょう。
しかし、成績の見え方として、First Languageで「C」を獲れる生徒なら、Second Languageで「B」、力があれば「A」だって狙えます。
それならば「A」を多く獲る戦略で、Second Language を選ぶほうが得策だと私たちは思います。
ハイレベルなメンバーが集うエプソムのA-Level
Photo: 広大なEpsom Collegeのキャンパス
次男は、IGCSEで一定の基準のスコアをクリアしたため、エプソムカレッジのA-Levelを18ヵ月で終わらせる“ファストトラックコース”への入学を果たしました。
有難いことにこのファストトラックコースは、寮費も含まれたパッケージで、正規の学費・寮費と比較すると70%も割引となるのです。
入学前は、“A-Levelに進むのは世界の有名大学を目指している志が高い生徒ばかりで気後れしないか…”という不安がありましたが、エプソムのA-LevelはIGCSEを終えてそのままYear12に進んできた生徒も多く、自分と同じようにまだはっきりと進学先のイメージを持っていない子も多かったので、次男は少し安心した様子でした。
コロナ禍の規制でほとんどイベントがなかったYear11の学校生活と比べると、エプソムでスタートしたA-Levelのボーディング生活ではイベントもたくさんあり、その運営も担う立場となって、一気に学生らしい生活を取り戻しました。
同学年44人の仲間とともに、A-Levelという高い壁を乗り越えるレースが始まったのです。
A-Levelを教えるシックスフォームの先生方も、マレーシア最高水準の教育を提供してくれるメンバーが揃っています。
新しく出会うA-Levelの仲間の中には英国ケンブリッジ大学を目指しているという生徒もいて、そのような志の高い仲間たちの勉強に対する姿勢や考え方に、次男は毎日ビリビリと刺激を受けて過ごしていきました。
次男が痛感したA-Levelを闘うための自己管理能力
フルボーディングの生徒として寮に滞在し学校で学ぶ生活にも慣れてきた頃、短いホリデーがあり、自宅に帰ってきた次男がこんな話をしてくれました。
「大事なのはタイムマネジメントだと思った。みんな同じ限られた時間で、自分のペースでやっていたのでは成長が間に合わない。」
“すごい世界にいるなぁ…”と、私は率直にそう思いました。
“課題を終わらせる”というような期限付きの達成感ではないと彼は言います。たしかにA-Levelは、“ここまでいけば大丈夫!”というゴールテープは一切用意されていません。
限られた時間で行けるところまで行く。“どのくらいの速度で進めば、あるいは、どれだけ理解していれば自分の目標に手が届くのか?”ということを、現実的に捉える冷静さが求められます。
ただ我武者羅に勉強するのでは、必ずどこかで破綻します。A-Levelの目標スコアから逆算して、限られた時間の中で自分の力を着実に積み重ねていくという地道な戦略が不可欠です。
とはいえ、年頃の男の子です。友達とくだらないことをすることもあれば、女の子だって気になります。
青春の中で息子が鍛えられていることに、親としてこの上ない喜びを感じました。
次男は自宅に帰ってくるたびに、寮で起きる珍事件や周りにいる天才くんたちのエピソードを聞かせてくれて、A-Levelの1年半は親としてもとても楽しい時間を過ごすことができました。
Photo: Epsomキャンパスの夕暮れ時
子供に向き合い、選択肢を差し出すのが親の役目
次男がA-Levelを選んだのは彼に戦える武器があると自分で判断したからですが、A-Levelを選ぶまでに私も親としてしてきたことがあります。
私は、自分の人生を振り返ってみても、自分自身に誇れる学歴がありません。
これは自分が選んだことなので自分の責任ではありますが、その分苦労してきただけに、後悔が残っています。
そして、“身近なところに、もっと俯瞰的に長い目でアドバイスをしてくれる大人がいてくれてたら…”という想いもあります。
私は、この苦い想いをどうしても断ち切りたかった。同じ後悔をしてほしくないという強い想いから、息子の進路を本人任せにしないことを決めていました。
親の言いなりという意味ではなく、子供が自分自身では見つけられない選択肢を、一番近くにいる一人の大人として示してあげたいのです。
現に、私には2人の息子がいますが、2人とも違う進路を歩んでいます。それぞれの個性に適った選択肢を示し、その中から彼らが選んだそれぞれの進路です。
私の理想は、子供に、“さも自分の足で歩いているような錯覚をさせながら実は私の掌の上を歩いていること”です。
見つけて欲しいものを、見つけやすいところに落としておく。それを自分で見つけて、自分で取捨選択して欲しいのです。
未来って、時期がくれば自ずと拓けてくるわけではないですよね。
誰しも、人生を振り返った時には必ずターニングポイントがあるものです。
私は、彼らの人生にとって大事なターニングポイントが来るたびに、親として最適な方向へと誘導したいと思っています。
Photo: University of Amsterdam
まとめ
A-Levelは生半可なコースではないことを理解する必要がある
子供たちの人生の岐路でどっちに進むか、その決断における親の役割は大きい
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次回に続く
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